コラム
相続税評価額を下げる!土地活用の賢い方法

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はじめに
相続税は多くの方にとって大きな負担となります。特に都市部では土地の評価額が高く、相続税の支払いのために土地を手放さざるを得ないケースも少なくありません。相続税対策として重要なのは、小規模宅地等の特例が適用できるような土地の購入と活用です。また、土地の形状や立地によっても評価額は変わります。本コラムでは、小規模宅地等の特例を中心に、旗竿地(はたざおち)などの特殊な形状の土地も含めた、相続税対策のための土地活用の具体的な方法をご紹介します。
相続税評価額の基本的な仕組み

まず、土地の相続税評価額がどのように決まるのかを理解しましょう。土地の相続税評価額は、路線価方式または倍率方式によって算出されます。一般的に、相続税評価額は実勢価格(市場価格)の約80%程度に設定されています。
しかし、土地の利用状況によって、この評価額は大きく変わります。例えば、貸家建付地や貸宅地、事業用地などは一定の評価減が認められています。この評価減の仕組みを活用することが、相続税対策の鍵となります。
土地活用による相続税評価額の引き下げ方法
1. アパート・マンション経営による貸家建付地の評価減
土地にアパートやマンションを建てて賃貸経営を行うと、その土地は「貸家建付地」として評価されます。貸家建付地の評価額は、更地の評価額から以下の計算式で減額されます。
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
例えば、借地権割合が70%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%の場合、評価額は更地の79%(1-0.7×0.3×1)になります。これにより、単純計算で21%の評価減が可能です。
建物自体も「貸家」として評価され、建物の評価額にも以下の減額が適用されます。
貸家の評価額 = 自用家屋評価額 × (1 – 借家権割合 × 賃貸割合)
同じ条件では、建物評価額も30%減額されます。
2. 小規模宅地等の特例の最大活用
相続税対策において最も効果的なのが「小規模宅地等の特例」です。被相続人等の事業用や居住用に使用されていた土地については、この特例を活用することで、土地の評価額を最大80%減額することが可能です。
特例の適用対象と減額率は以下の通りです:
- 特定事業用宅地等:400㎡まで80%減額
- 特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額
- 貸付事業用宅地等:200㎡まで50%減額
例えば、市街地の一等地に所有する土地を事業用として活用していれば、400㎡までは評価額が80%減額されます。1億円の土地であれば、相続税評価額は2,000万円まで下がる計算です。
この特例を最大限に活用するためには、被相続人の生前から計画的に土地を購入・活用することが重要です。特に自宅用の土地を購入する際は、将来の相続を見据えて330㎡以内に収まるよう検討することをお勧めします。また、事業を営んでいる場合は、事業用の土地も400㎡以内に収めることで、大幅な評価減が可能になります。
3. 定期借地権の設定
土地に定期借地権を設定することも、評価額を下げる効果的な方法です。定期借地権付きの土地は、借地権と底地権に分かれて評価されます。底地権の評価額は、自用地評価額よりも大幅に低くなります。
例えば、借地権割合が70%の地域では、底地権の評価額は自用地評価額の30%まで下がります。ただし、この方法は土地の使用権を長期間手放すことになるため、慎重な検討が必要です。
4. 形状に特徴のある土地(旗竿地等)の活用
住宅地にある「旗竿地 (はたざおち)」とは接道部分が細長く、奥に広い敷地が広がる形状の土地のことで、一般的な整形地に比べて相続税評価額が低くなる傾向があります。
旗竿地は以下の理由から評価額が下がります:
- 奥行価格補正:接道部分が細長いため、奥行きが長いと見なされ、奥行価格補正による減額が適用されます。
- 間口狭小補正:道路に接する間口が狭いため、間口狭小補正による減額が適用されます。
- 不整形地補正:整形地に比べて利用価値が低いと見なされ、不整形地補正による減額が適用されます。
これらの補正により、旗竿地の評価額は同じ面積の整形地に比べて20〜30%程度低くなることもあります。ただし、居住性や将来の売却価値も考慮した上で検討する必要があります。
5. 農地としての活用
市街化区域内の農地は、宅地に比べて評価額が低くなります。特に、生産緑地に指定された農地は、一般の宅地に比べて大幅に評価額が低くなります。
ただし、農地として認められるためには、実際に農業を営む必要があります。また、生産緑地の指定には条件があり、指定を受けた後は一定期間(30年間)は宅地転用ができないなどの制限があります。
土地購入・活用の注意点

土地購入・活用による相続税対策を行う際は、以下の点に注意が必要です。
- 小規模宅地等の特例を意識した土地選び:特例の面積制限(居住用は330㎡、事業用は400㎡)を意識して土地を選ぶことが重要です。特例の適用条件も理解しておきましょう。
- 長期的視点での検討:土地活用は一度始めると簡単に変更できません。将来の土地利用計画も考慮して検討しましょう。
- 特殊な形状の土地のメリット・デメリット:旗竿地などは評価額が低くなる利点がありますが、居住性や将来の売却価値も考慮する必要があります。単に評価額が低いだけでなく、実際の生活や事業にも適しているかを検討しましょう。
- 収益性の確保:単に相続税対策だけを目的とせず、長期的な収益性も考慮することが重要です。特に賃貸経営の場合、空室リスクや維持管理費なども考慮する必要があります。
- 専門家への相談:土地購入・活用と相続税対策は複雑で、最新の税制改正にも注意が必要です。税理士や不動産コンサルタントなどの専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
相続税対策において最も効果的なのは、小規模宅地等の特例が適用できるような土地の購入と活用です。特定の居住用宅地や事業用宅地は大幅な評価減が可能なため、面積制限を意識した土地選びが重要です。
また、旗竿地のような特殊な形状の土地は、奥行価格補正や不整形地補正により評価額が低くなる傾向があります。アパート経営による貸家建付地としての活用や定期借地権の設定なども、状況に応じて検討する価値があります。
相続税対策は単に評価額を下げるだけでなく、土地の実用性や将来性も考慮して総合的に判断することが大切です。専門家のアドバイスを受けながら、ご自身の状況に合わせた最適な方法を選択し、計画的に対策を進めましょう。
将来の相続に向けて土地の購入や活用を検討する際は、この記事で紹介した方法を参考にしていただければ幸いです。相続税対策は早めに始めることで、より多くの選択肢が生まれます。今から準備を始めてみてはいかがでしょうか。